
日本に来て間もない頃、妻と私は歌舞伎のチケットをもらいました。私たちは、歌舞伎について全然知らないまま、歌舞伎座に入りました。初めて三味線、太鼓、鐘の音を聞きました。舞台で役者の動きは、私にとって異国的なものでした。ブチブチ途切れるイヤホンで英語の通訳を聞きましたが、話はあまり分かりませんでした。最後に男が花道をゆっくりと重い足取りで歩いて行きます。肩に何か重いものを背負っているようでした。会場の照明がつくと、客は皆涙を拭っていました。
印象的なシーンでしたが、意味は分からないままでした。
最近、歌舞伎座の近くにある歌舞伎専門の図書館を見つけました。そこの図書館員に私が覚えている話を説明すると、大きな古い本を何冊か渡されました。私はそれを何時間もかけて真剣に読みました。そして、見つけたのです。
『菅原伝授手習鑑』は、平安時代の貴族、学者、漢詩人、政治家である菅原道真の話です。道真は謀反を企てていると疑われ、不当に訴えられましたが、その恥を受け入れて、家族と離れ、国から去りました。道真は、愛する娘の顔を二度と見ることができませんでした。
私が見たのはその場面だけでしたが、話はそれで終わりではありませんでした。「寺子屋」という有名なシーンがその少し後に出てきます。
道真の死後、残された息子はある寺子屋にかくまわれていました。寺子屋の主人は道真の弟子だった人でした。ある日、寺子屋の主人はその息子を殺すよう命じられます。主人は道真の息子を守るため、悩んだ末に別の少年を殺しました。実はその殺された少年の父親は、道真に仕えていたもう一人の弟子でした。その弟子は道真の息子の身代わりにするために、あらかじめ自分の息子を寺小屋に送っていたのです。
私はこれを読むと、図書館の真ん中で立ち上がって、「これだ!これが福音だよ!」と叫びたい衝動に駆られました。日本文化についての古い本を読んで、またもやキリストへの 手がかりを見つけたのです。私は非常な衝撃を受け、ぼう然としたまま、何とか家にたどり着きました。