October 8, 2020 - Roger & Abi Lowther
「わたしはぶどうの木、あなたがたは枝です。人がわたしにとどまり、わたしもその人にとどまっているなら、その人は多くの実を結びます。わたしを離れては、あなたがたは何もすることができないのです。…あなたがたが多くの実を結び、わたしの弟子となることによって、わたしの父は栄光をお受けになります。」(ヨハネ15:5, 8)
2020年5月31日のペンテコステの日曜日にグレースシティチャーチ東京は10年記念日を迎えた。世界でも特にクリスチャンが少ない日本で教会開拓ムーブメントを起こすのは不可能なことだと言われていたが、この10年で開拓伝道により新たに10の教会もできた。
教会開拓の模範はりんごの木を植えることに似ていると言われる。
りんごの木が元気良く大きく成長して実をつける。そのりんごの種を他の場所に蒔いて、栄養を与えると木が育つ。やがて、その木が成長し実をつける。ここまでには10年かかると言われている。教会もまた、一つの教会ができるまでには日本では10年、20年の年月がかかる。
もっと早いやり方は枝を接木することだ。成長したりんごの木の一つの枝を切り取って、他のところに移植する。新しい実を結ぶまでの期間は、おそらく3年間とはるかに短くなる。このようにしてできた2つの教会の関係は親子のようなものである。
神は牧師となる人を次々と私たちグレースシティチャーチ東京のもとに送って、育ててくださった。準備ができた時、教会のリーダーや熱心な数人のメンバーとともにこの牧師を新しい教会ミニストリーへと送り出した。このように枝を分けることで新しい教会を生もうとした。しかしその弱点は、親の木である教会は実を結ぶ枝を失い、再び新しい枝を成長させるのが難しいことだ。
いくつかの教会が始まったことを喜びながらも、枝分かれするたびにグレースシティの人数は減って、弱っていった。ある年には2つの教会が生まれたが、そのために人数が減ったので2つの礼拝が残念ながら一つになってしまった。
グレースシティのメンバーは心配して呟き始めた。りんご式の開拓伝道に限界を感じていた。本当にこのように何回も枝を切るやり方がいいのか?とりあえず枝を切り取るのをやめて木を守った方がいいのではないか?
しかし、一方で、私たちのネットワークは広がっていった。教会のリーダーやメンバーや牧師を新しい教会ミニストリーへと送り出すことは、新しい木を育てるというより、コミュニティの範囲を広げることになった。一つの教会ではできない活動が活発になり、協力のコミュニティが広がった。ある教会のメンバーが他の教会のグループのリーダーになる、オンラインでの礼拝のやり方について複数の教会で話し合う、ある教会の建物で別の教会がイベントを行う、など。一つ一つの教会は大きくならなかったが、ネットワークの広がりはできた。そして、その中から新しい教会も生まれてきた。振り返ってみると、我々のこの10年の活動はりんごの木を植えようとしながら、知らずに別のものを育てていたのではないか。
近所の小さなスーパーにたくさんの種類のキノコがある。しいたけ、えのき、まいたけ、なめこ、エリンギ、マッシュルーム、たもぎ、しめじ、ピオッピーノ、まつたけ、くろあわびたけ、きくらげなど。それぞれのキノコには独特の味、食感、形がある。非常に多くの異なる種類があるが英語ではたいてい「マッシュルーム」としか呼ばれていない。日本の暗く、涼しく、湿度の高い環境ではキノコが豊富に生えるので、日本語ではそれぞれのキノコに名前がある。
キノコは種を作って繁殖するものではない。また、他のキノコから生まれるわけでもない。キノコは、目に見えない菌糸体(英:mycelium)からできる。その繊維は高速道路のように必要な水分と栄養を運ぶ。キノコはこのネットワークから「子実体」として生まれる。
キノコは種を蒔いたり接木したりしてできる物ではなく、親子関係にはない。互いに依存しているのではなく、むしろこの菌糸体というネットワークに等しく頼っている兄弟のような関係だ。ネットワークがなければ必要な栄養を得られず、たった一つで生き延びることはできない。
グレースシティチャーチ東京のこの10年の活動はりんごではなくキノコの栽培のようだ。命に必要な栄養と水を与えてくれる菌糸体ネットワークから新しい教会が芽生える。
都市に新しい教会を生むために必要なのは、神が都市全体で何をなさっているかという幅広い見方ではないだろうか。賛美の参加者数、洗礼者数、献金の額などで一つの教会を測るのではなく、全体のネットワークを見ることが重要だ。
東京にはこのような菌糸体が育っている。10年前私たちの活動は数人の牧師だけで始まったが、今では50人くらいの牧師やリーダーが協力している。コロナウイルスの感染拡大の中でも、オンラインで毎月集まったり、分かち合ったり、訓練を受けたり、互いに祈り合ったりして、ネットワークは強くなっている。
このネットワークは教派を超えて東京の幾つかの教会に広がっており、そこからビジネスや芸術の分野の活動も生まれている。SALTプロジェクトは教会でのサーバント・リーダー・トレーニングを行う。LIGHTプロジェクトは職場におけるクリスチャンの役割についてビジネスパーソンに教える。コミュニティーアーツ東京は芸術家のリーダーを育てる。このようなネットワークは、礼拝を行うだけの伝統的な開拓伝道では作れない新しい場所やコミュニティーを作っている。
世界の都市にはこのような有機的なネットワーク、すなわちキノコ式の開拓伝道が益々必要なのではないか。
キノコ式の開拓伝道は、りんご式とは異なり、計画を立てたり成長を予測したりする物ではない。ある時はそのネットワークから思わぬ形で素晴らしいものが生まれてくるが、その効果が目に見えないこともある。しかし、神の力で高いビルの暗い森の中にあたらしいキノコが生まれる。神は教会が成長し繁栄するために必要な水やすべての栄養素を下さる。神が祝福しているコミュニティからはたくさんのキノコが生まれるはずだ。
りんごの種まきや接ぎ木だけでなく、都市にキノコのための菌糸体を育てることが今必要なのではないだろうか。
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